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インフルエンザ予防に口腔ケアが効果的な理由

インフルエンザ予防に口腔ケアが効果的な理由

2025/12/10 ブログ

こんにちは。愛媛県松山市の「もりもと歯科クリニック」院長の森本です。当院のWebサイトをご覧いただき、ありがとうございます。

毎年冬の時期になると、インフルエンザの流行がメディアでも大きく取り上げられます。そのため「手洗いやうがいはしているけれど、予防のために他にできることはある?」「口の中のケアが感染予防に関係あるって本当?」と疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。

お口の中の環境は全身の健康に大きく影響し、適切な口腔ケアによってインフルエンザの感染リスクを軽減できることが科学的に証明されています。

今回はインフルエンザ予防と口腔ケアの関係性から日常でできる具体的なケア方法まで、詳しく解説します。ご自身やご家族の健康を守るために、ぜひ参考にしてください。

インフルエンザと口腔内の関係性

口の中を清潔に保たないと、虫歯や歯周病の原因菌が増殖してプラーク(歯垢)を形成します。この歯垢には肺炎球菌やインフルエンザ菌をはじめ、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、セラチア菌といった感染症の原因となる細菌が潜んでいます。これらの細菌が作り出すプロテアーゼという酵素は、インフルエンザウイルスが気道の粘膜から細胞に侵入しやすい環境を作り出します。口腔環境が悪化するほどプロテアーゼの量が増加し、インフルエンザの発症リスクや重症化の可能性が高まります。

インフルエンザを予防する適切な歯みがきと口腔ケア

インフルエンザを予防する適切な歯みがきと口腔ケア|インフルエンザ予防に口腔ケアが効果的な理由|金属アレルギー・掌蹠膿疱症専門歯科医療サイト|愛媛県松山市もりもと歯科クリニック

具体的にどのような口腔ケアを実践すれば良いか疑問に思う方は多いでしょう。毎日の習慣として取り入れやすいセルフケアから、歯科医院での専門的なケアまで、効果的な口腔ケア方法をご紹介します。

自宅でのセルフケア

ブラッシング

鏡を見ながら3〜5分かけて隅々まで磨きます。特に就寝前の歯磨きは細菌の夜間増殖を防ぐため念入りに行いましょう。高濃度フッ素入りの歯磨き粉(1,450ppm)を使用することで歯質強化も図れます。ただし、6歳以下のお子様には1,000ppm配合の製品を年齢に応じて少量使用するようにしましょう。

フロスや歯間ブラシ

歯ブラシだけでは落とせない歯間の汚れは、フロスや歯間ブラシで除去します。歯と歯の隙間に潜む細菌をしっかりと取り除き、プラークの形成を防ぎます。適切なサイズの歯間ブラシについては、かかりつけの歯科医院で相談して最適なものを選びましょう。

舌の清掃で口腔環境を整える

舌ブラシを奥から手前に一方向に動かし、優しく汚れを除去します。舌を傷つけないよう優しくあてるのがポイントです。舌苔の除去をすることで口腔内の細菌数を減らし、ウイルス感染のリスクを下げます。

歯科医院で行うプロの口腔ケア

自分で歯石除去や歯周ポケット内の清掃をするのは困難です。そのため、3~6ヶ月に一度は歯科医院でのクリーニングや歯石除去を行いましょう。かかりつけ医での定期的なケアをすることで、感染リスクを大幅に軽減できます。

口腔内の乾燥を防ぐ生活習慣

空気の乾燥によって鼻やのどのバリア機能が低下すると、インフルエンザに感染しやすくなります。口腔内の乾燥対策も、セルフケアの一環として重要です。

こまめな水分補給で潤いを保持

適度な水分摂取を心がけ、口腔内の潤いを維持します。一般的に1日あたり1,200ml以上の水分摂取が推奨されており、コップ1杯を200mlとすると6杯分以上に相当します。多く感じるかもしれませんが、2〜3時間おきに水分を摂る習慣を身につけると、無理なく必要量を確保できます。特に高齢者の方は気温や体調の変化、のどの渇きを感じにくく、慢性的な水分不足に陥りやすいため、服薬のように時間を決めて意識的に水分補給を行うことが大切です。例えば、起床時・食事前・入浴前後・就寝前などタイミングを決めて習慣づけると続けやすくなります。

唾液分泌の促進

唾液には自浄作用や抗菌作用があり、ウイルスや細菌の侵入を防ぐ重要な役割があります。以下の方法で唾液分泌を促進し、口腔環境を整えましょう。

・唾液腺マッサージで分泌を促進する
・食事の際は一口30回を目安にしっかりと咀嚼する
・梅干しやレモンなど酸味のある食品を適度に取り入れる

このような習慣を続けることで口腔内の健康を維持できます。

また、室内湿度を50〜60%に維持することも乾燥対策として効果的です。

口腔ケアでインフルエンザの発症率が10分の1に低下した研究結果

歯のメンテナンスでインフルエンザの予防をする女性|インフルエンザ予防に口腔ケアが効果的な理由|金属アレルギー・掌蹠膿疱症専門歯科医療サイト|愛媛県松山市もりもと歯科クリニック

東京歯科大学名誉教授の奥田克爾氏らによる研究により、専門的な口腔ケアでインフルエンザの発症率が10分の1になったということが実証されました。2003年9月から2004年3月にかけて実施されたこの研究では、東京都府中市の特別養護老人ホームのデイケアに通う65歳以上の高齢者190人を対象に比較調査が行われました。

・歯科衛生士による口腔ケアと集団口腔衛生指導を週1回実施したグループ(98人)
・従来通り自分や介護者による口腔ケアを続けたグループ(92人)

上記の2グループに分けて検証した結果、専門的な口腔ケアを受けたグループのインフルエンザ発症者はわずか1人でした。一方、自己流ケアのグループでは9人が発症し、発症率に約10倍の差が見られました。

通常、口腔内の細菌が産生する酵素(プロテアーゼなど)が、インフルエンザウイルスの感染力を高める働きをします。しかし、歯科衛生士によるプロフェッショナルな口腔ケアにより口腔内細菌数とこの酵素の働きが低下したことが、発症リスク低下につながったと考えられています。

研究結果は国内外の歯科領域専門誌で発表され、メディアでも取り上げられるなど、口腔ケアの感染予防における重要性が広く社会に認知されるきっかけとなりました。

このように口腔ケアは、単なる虫歯や歯周病の予防だけでなく、感染症対策においても重要な役割を果たしているのです。

参考:PubMed|Professional oral health care by dental hygienists reduced respiratory infections in elderly persons requiring nursing care

口腔ケアでインフルエンザ対策を始めましょう

インフルエンザ予防において、口腔ケアは従来考えられていた以上に重要な役割を果たしています。

毎日の丁寧な歯磨き、フロスや歯間ブラシでの清掃などに加え、定期的な歯科医院での専門的なケアを組み合わせることで、口腔内の細菌数を減らし、ウイルス感染を防ぐ効果が期待できます。また、適切な水分補給や唾液分泌の促進により、口腔内が持つ本来の抵抗力を高めることも大切です。

もりもと歯科クリニックでは、全身の健康を考えた歯科医療を提供しており、定期メンテナンスにも力を入れています。口腔内環境の全身への影響を常に考え、患者様ひとりひとりの健康と生活の質の向上を歯科医療から支えます。お子様からご高齢の方まで、どなたでも気軽に相談できる「かかりつけ医」として、お気軽にご相談ください。

下記のページもご参照ください。

「お口の健康状態」が「全身の免疫」を変える?|松山 もりもと歯科クリニック